笙野頼子著『なにもしてない』2019年09月17日 22:15

14年12月10日読了。
 二編収録。表題作では、周囲から「なにもしていない」と思われている作家の主人公が、「なにもしていない」事の後ろめたさから逃れるように外界を遮断し引き篭っていく様子が描かれる。前半では手の爛れが、後半では母親との葛藤が描かれていて主題が分裂している。分裂しているのが悪い事なのかどうかは良く判らない。
 「イセ市、ハルチ」では、幼少期を過ごしたハルチという町に帰省した主人公が、その町の記憶が大きく欠落している事に気付く。町で過ごす内に、抑圧されていた記憶が蘇り始める。主人公の母親の一族が皆奇怪な性格で興味を引く。特に母親の妹(主人公の叔母)は変では済まされないはっきりと異常な性格だが、母親がそれを重大事とは思っていない様子なのが奇妙である。

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