G・B・マシューズ著『哲学と子ども 子どもとの対話から』2019年09月07日 22:42

14年11月20日読了。
 子供における哲学的思考について語りながら、子供は単なる未成熟な小さな人である、という考え方に疑問を持ち、ピアジェに代表される発達心理学の一派に於ける「思考発達段階説」を批判する。完全に否定する訳ではないが、少なくとも一面的な分析に過ぎない事を指摘する。特に、子供と死を扱った8章は読み応えがある。
 「子どもたちは、人間である。人間として、道徳的にも知的にも充分尊敬に値する。彼らは、将来の可能性をもった存在としてだけでなく、現在のあるがままの姿で、尊重されるべきである」(p.186)。
 収録されている子供達の言葉が素晴らしい。
 「でもお父さん、蚤はそんなにいつまでも跳び移れるわけがないわ。永遠にいつまでも続くものは、数字だけよ!」(サラ、四歳)。
 「お父さん、どうしてすべてのことは夢じゃないと分かるの」(ティム、六歳)。
 「わかったよお母さん。それは誰かが描いた完全な円のようなものなんだ。それが描かれたときにそこにいれば、その円がどこから始まったのか分かる。でも、円が完成した今となっては、始めがどこか分からない。それは、終わりが始まりと何の印もなくつながっている完全な円のようなものなんだ」(世界の始まりについて、著者、五歳か六歳の頃)。
 「お父さん、世界って、全部、色でできているのね」(クリスティン、四歳)。
 「発音できなかったら、言葉もないでしょ……言葉がなければ、考えることもできないし……考えることができなければ世界もなくなっちゃう」(クリスティン、五歳)。
 「ママ、あたしたちは本当にライブなの、それともビデオに撮られたものなの?」(女児、三歳半)。
 くらくらする。

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